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カスタムイヤホン(カスタムIEM)のすすめ

by 橋本 尚久

今回は特に新しい話題でもないのですが、カスタムイヤホン(カスタムIEM)について書いてみたいと思います。

カスタムイヤホンとは

カスタムイヤホンとは、個人の耳型に合わせて作られるオーダーメイドのイヤホンのことです。服で言えばオーダーメイドのスーツのようなものです。これに対して耳型採取が要らない通常のイヤホンはユニバーサルイヤホンと言われます。

カスタムイヤホンは元々ステージで歌ったり演奏したりするミュージシャンの為に考案されたもので、通常ミュージシャンは自分の声や演奏をモニターするためのモニタースピーカーを自分に向けて設置していますが、大音量下では自分の声や演奏が聴き取りずらくなるため、スピーカーの位置に関係なく自分の声や演奏を聴き取りやすくするためのモニターイヤホンが求められるようになりました。特にステージ上で激しく動き回ることが多いミュージシャンにとって一旦装着すれば外れにくい自分の耳にぴったりフィットするモニターイヤホンが出来ないかという訳で、1995年頃ヴァン・ヘイレンのツアーに同行していた音響エンジニアのJerry Harvey氏が耳にぴったりはまることで外部の音を適切に遮断し、必要な音をミュージシャンの耳に届けることが出来る専用のイヤホン、カスタム・イン・イヤーモニターを開発したのがはじまりです。

元々はステージで使われるミュージシャンが使う業務用イヤホンであった訳ですが、その外音遮断性と音の良さから最近では一般の人でもカスタムイヤホンを注文するようになってきています。

カスタムイヤホンのメリットとデメリット

このように最近一般的に使われるようになったと言っても数あるイヤホンの中ではまだまだニッチな存在だと思います。そのメリット・デメリットを箇条書きで上げてみます。

メリット

・個人の耳型に合わせて作られるため耳にぴったりフィットし、音漏れや外から音が入ってくるということが少なく、外れにくく安定した着け心地が得られる。

・元々は業務用モニターイヤホンのため、出来るだけ原音に忠実かつ一つ一つの音を聞き分けられるように作られているため大変音が良い。

・イヤホン自体が密閉された作りになっており、音が外に漏れない構造になっており、また耳にぴったりフィットすることで音漏れがなく、それほど音を大きくしなくても低音から高音まで十分聴き取れるので、結果的に耳への負担が軽減される。

・業務用モニターイヤホンから発生している関係から、樹脂製で一体成形されており丈夫で、ケーブルも着脱可能になっており、断線にも強く、断線したとしてもケーブル交換が容易。

・カスタム品なので色やデザインを選ぶことができ、その気になれば自分で絵柄を用意してイヤホンの表面(フェイスプレート)に反映させることで自分だけの個性的なイヤホンを作ることも可能。

デメリット

・耳型採取が必要で、補聴器を扱っているお店で耳型の採取が必要。

・オーダーメイドのため、一旦注文するとキャンセル出来ない。また、納期がかかる(日本のメーカーで2~3週間くらい、海外だと2~3ヶ月くらい)。

・オーダーメイド品で、手放すときのリセールバリューがないに等しい。

・ユニバーサルイヤホンと比べてどうしても価格が高めになってしまう(一番安いものでも3万円くらい)。

最近のユニバーサルイヤホンはケーブル着脱可能で数千円くらいの価格の安いものも出てきているので、カスタムイヤホンのメリットとしては安定した着け心地、遮音性、音質、デザインということになるかと思います。

Westone ES60とは

カスタムイヤホンメーカーは日本国内と海外と合わせると数十社ありますが、その中でも歴史が古い会社はアメリカのUltimate EarsとWestoneの2社です。Ultimate Earsの代表的なカスタムイヤホンはUE5 proという機種で、価格も67,800円と比較的リーズナブル(耳型採取代は別・だいたい5,400円くらい)で音も良いため大変人気があります。私は既にユニバーサルイヤホンのUE5 proを持っていたので、もう一社のWestoneの代表的なカスタムイヤホンであるES60を注文しました。

ES60は内部にバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを6基搭載したイヤホンで、業務用でも広く使われているモニターイヤホンでもあります(なお、UE5 proも業務用モニターイヤホンで広く使われています)。ES60の良い所は、イヤホンケーブルの着脱部分が2pinやMMCXという一般的にイヤホン交換用に使われている接続端子を採用しているため、ケーブル交換が容易であるということです。Ultimate Earsのカスタムイヤホンは最近IPXコネクターという特殊な接続端子に変わったため、この端子に対応した交換用ケーブルが今の所純正品しかなく、リケーブルはし難いと言えます。

価格は158,000円(耳型採取代とフェイスプレート代片耳分4,500円~23,000円は別)とUE5 proよりはかなり高くなります。

実際にES60を注文してみた

注文したのは今年の1月末で、実際に納品されたのは4月末でしたので、注文から納品まで約3ヶ月かかりました。注文時期によってはもっと早くなる場合もあるようですが、だいたい2~3ヶ月はかかると思っておいた方がよいようです。

下は納品時の写真で、気密性の高い大きめのプラスチックの容器にイヤホン本体と乾燥剤、潤滑ゼリーが入っています。なお、この潤滑ゼリーですが、特に必要性がなく、開封以来一度も使っていません(笑)。

納品された時に自分の耳にちゃんとフィットするかをまず確認し、問題なければ音出しもしてみて音が左右からちゃんと出ているかチェックします。最初耳に入れてみた時ややきつめに感じるくらいで丁度良いようです。耳に入れてもすぐ取れてしまうとか、きつすぎて耳にはいり辛いなどがあれば、納品されてから1ヶ月以内であれば再調整(リフィット)が無料で可能です。ただ、新しく作り直すのではなく、あくまで耳に入る部分を削ったり樹脂を盛ったりする微調整となるので、そこは注意する必要があります。私の場合は装着も音も問題ありませんでした。メーカー保証は1年の所が多いですが、Westoneは標準でメーカー保証2年である所も良い所だと思います。

下は耳型の写真で、耳型を作ってから2週間以内にはカスタムイヤホンを注文した方が良いとのことです(耳型がだんだん劣化していくかららしいです)。耳型は通常メーカーに送ったらこちらに返ってくることはありません。

耳型採取時にも注意が必要で、良い耳型をとるためには、前日・当日は飲酒をしないこと(血管が拡張して耳の形が変わるので)、当日は耳型採取までイヤホンは使用しないこと(耳の穴の形が変わってしまうため)、耳型採取の2~3日前くらいに耳を痛めない程度耳掃除をしておくこと(当日は避ける)、前日は早めの就寝を心がけることなどです。

耳型採取は軽く口を開けた状態で行いますが、開口・固定に割り箸を使う方法とバイトブロックを使う方法があり、私は一般的な割り箸を使う方法で行いました。割り箸も横でくわえる方法と縦でくわえる方法とありますが、私は横にくわえる方法で行いました。バイトブロック、割り箸(縦)、割り箸(横)の順に口の大きさが小さくなり外耳道のカーブが緩くなります。ステージで激しく動き回るようなミュージシャンの場合は外耳道のカーブが最もきつくなるバイトブロックを使って耳型採取するらしいですが、一般的なリスニング用途では割り箸(縦)か割り箸(横)で十分みたいです。

耳型採取は以前は補聴器を扱っているお店でないと難しかったのですが、最近は東京大阪であれば耳型採取をしてくれるお店が入っているか併設されているイヤホン専門店があり、耳型採取(インプレッション)をとりやすくなっています。

ES60はWestoneのホームページ(英語ページ)でどんなイメージになるかシミュレーションできます。下はそのWebページでシミュレーションしてみた画像です。

イヤホンケーブル交換が容易なMMCXで注文したので、早速他社製のケーブルに付け替え(リケーブル)しました。下の写真がそれで、NOBUNAGA Labs 虎徹 (Kotetsu) AK2.5mm4極バランス-MMCXケーブルです。価格は14,800円で7N-OCCという純度99.99999%の銀メッキ単結晶無酸素銅線と4N純銀線(純度99.99%)を使ったハイブリッドケーブルを採用しており、値段だけ見ると高いように思えますが、使われているケーブルの品質を考えるとなかなかリーズナブルな価格のケーブルです。実際、Westone純正の黒い標準ケーブルと聴き比べると純正ケーブルのウォームな感じから解像感や音の広がりが良くなります。新品にこだわりがなければ、中古だと1万円未満で手に入ることもありますので、eイヤホン等のイヤホン専門店でチェックしてみるのも良いかも知れません。

実際カスタムイヤホンを作ってみてどうなのか

一番気になる点はここだと思います。耳型を作る必要性や納期、一旦注文するとキャンセル出来ないということがあるので、なかなかに敷居が高いとは言えます。しかし、自分で作ってみて思いましたが、これはかなりおすすめできます。

その理由として、とにかく音が良い装着感が良い、そのことに尽きると思います。自分の耳の形に合わせて作っているので、装着感が良いのは当たり前なのですが、イヤホンは装着感が音質と同じかそれ以上に重要です。カスタムイヤホンは装着感が良いため、装着しているのを忘れるほどとまでは言いませんが、長時間着けていても耳が痛くなったりすることもなく、音楽に浸ることができます。遮音性も高いのですが、周りの音が全く聞こえないということはなく、音を出していなければ結構普通に聴き取れます。遮音性が高めのイヤーピースを着けた通常のイヤホンと同程度と考えてもらえば良いかと思います。

音質ですが、ステージモニターイヤホンと言われるだけあって、色々な音が聴き取り易くなっています。音は低音から高音までバランスが良く、イヤホンにしては音の広がり感も感じられます。ちょうど高品質なヘッドホンで聴いているような感覚に近いと言えます。この音作りが絶妙で、音楽を楽しく聴かせるチューニングになっています。

作りも樹脂で一体成形されていて、傷が付きにくくまた壊れにくくなっています。ただ、中に入っているBAドライバーは精密部品ですので、落としたりするのは避けた方が良いです。また、BAドライバーは湿気に弱いので、できれば補聴器用の除湿器を買っておくと良いかと思います。

まとめ

カスタムイヤホンは元々が業務用ステージモニターイヤホンでしたので、その音質は非常に良く、装着性や音質を考えた場合、高価格なユニバーサルイヤホンを考えておられるならば一度検討の価値は十分あると思います。最近は東京か大阪であれば耳型採取と注文を同じ店で出来るようになっており、注文もし易くなっています。カスタムイヤホンは注文後のキャンセルが出来ないことや購入後のアフターケア等を考えると、最初に作るカスタムイヤホンはステージモニターイヤホンを数多く手掛けているような実績の豊富なメーカーの製品をお勧めします。

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