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SONY MDR-Z1R

by 橋本 尚久

10月29日、SONYはシグネチャーシリーズの一環として、密閉型ヘッドフォン・MDR-Z1Rを発売しました。ソニーとしてはMDR-Z7以来のフラグシップヘッドフォンとなります。

久しぶりのSONY渾身のフラグシップヘッドフォン

このヘッドフォンは、MDR-Z7と同じく70mmの大口径ドライバーを採用しています。特徴は、振動板に従来のアルミニウムコートLCP振動板のドーム部分に薄膜マグネシウムドーム振動板を採用していること、ソニーとしてはこれまでで最強の高磁力ネオジウムマグネットを採用したこと、グリル部分に空気の流れを阻害しにくいフィボナッチパターングリルを採用したこと、ハウジング部分に通気性のある音響レジスターで共鳴を限りなく除去したレゾナンスフリーハウジングを採用したことです。

上図はSONY公式ページ http://www.sony.jp/headphone/products/MDR-Z1R/feature_1.html より。

外箱ですが、写真では分かりにくいですが、スピーカーセットの外箱か?と思うくらい大きい外箱です。

中にはこんな立派なケースが入っていました。SONYとしては大事なヘッドフォンを使わない時にはこのケースに入れて保管して欲しいということですが、大きすぎて邪魔なので、恐らくほとんどの人は押し入れの奥にしまうことになると思います(笑)

中を開けるとこんな感じでヘッドフォンが収められています。右側の黒い袋に4.4mm5極のバランスヘッドフォンケーブルと通常の3.5mmステレオのヘッドフォンケーブルが入っています。

上は別売りのバランスケーブルを接続した写真です。ヘッドフォンスタンドは別売りでソニーストアで購入することが出来ます。かなり大ぶりなヘッドフォンですので、大事なヘッドフォンを傷つけないためにもヘッドフォンスタンドはあった方が良いと思います。どちらかというと標準付属品の大きなヘッドフォンケースよりは、こちらのヘッドフォンスタンドを標準添付してもらった方が良いような気がします(笑)

ハイレゾウォークマン®NW-WM1Zとバランス接続した写真です。今の所、このヘッドフォンとバランス接続可能なのはハイレゾウォークマンNW-WM1ZNW-WM1AかDAC内蔵据置ヘッドフォンアンプTA-ZH1ES、DAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプPHA-3PHA-2Aに限られます。

装着性について

こんな大柄なヘッドフォンですが、装着感は大変良好で、長時間装着していても圧迫感もなく、疲れも感じさせません。他のヘッドフォンと違い耳全体を被うイヤーパッドなので耳が圧迫される感じがなく、長時間装着していても疲れないのかも知れません。ヘッドフォンは音質は勿論ですが、装着感が良いことも大変重要ですので、ここは大事なポイントです。なお、MDR-Z7も装着感が大変良いヘッドフォンです。

遮音性は?

割と外の音は良く聞こえます。逆に言うと遮音性はそれほど高くないかも知れません。遮音性に関してはMDR-Z7とほぼ同等な感じです。

音質評価の前に十分なエージングが必要

MDR-Z1RMDR-Z7もそうなのですが、ヘッドフォンは十分なエージングが必要です。エージングとは、通常再生を続けることで、特に物理的な可動部分があるヘッドフォンは振動板の可動性が高まる等で本来の性能を発揮するようになることです。

初めて箱から出してすぐの状態では音も固めで低音も高音も十分出ていない感じでしたが、十分エージングさせることで低音も高音も出るようになり、素晴らしい音を聴かせてくれるようになります。私見ですが、このヘッドフォンは最低30時間、出来れば100時間以上のエージングは必要な感じがしました。

気になる音質は?

MDR-Z7と比較して、

  1. 再生される周波数帯域が広い
    MDR-Z7も十分素晴らしいヘッドフォンですが、MDR-Z1Rと比較試聴すると、再生される音域が狭いことが分かります。MDR-Z1Rは超低域から超高域までフラットに再生されている感じがします。
  2. 再生ダイナミックレンジが広い
    MDR-Z1Rは非常に細かい小さな音から大きな音まで豊かに再生します。特に微小音の再生にMDR-Z1Rは優れています。MDR-Z7では聴き取れなかった非常に僅かな音もMDR-Z1Rでは聴き取れます。これは新規採用になった薄膜マグネシウムドーム振動板の効果が大きいと思われます。
  3. 音の籠もりが非常に小さい
    MDR-Z7は密閉型ヘッドフォンの宿命でどうしても籠もった感じが若干しますが、MDR-Z1Rはレゾナンスフリーハウジングのおかげでこの籠もった感じが非常に少なく、開放型ヘッドフォンに迫る開放感があります。
  4. 音場が広い
    MDR-Z1Rはヘッドフォンにありがちな音が頭の中心に低位する感じが少なく、コンサートホールやライブ会場の再生に近い音場の広さを感じさせてくれます。これはMDR-Z7では味わいづらい感覚です。
  5. 定位感が明瞭
    上記にも関係しますが、MDR-Z7に比べて音の配置が左右だけではなく遠近方向にも広がり、音に奥行きを感じやすくなっています。特にハイレゾ音源の再生ではどこでどんな楽器が鳴っているかをより感じやすくなり、これが臨場感の高さにも繋がっています。
  6. 演奏の空気感まで感じ取れる
    NW-WM1Zでハイレゾ音源(特にDSD音源)を再生してバランス接続でMDR-Z1Rで再生すると、ライブ音源では演奏が始まる前の気配やライブの熱気まで感じ取れます。

ここまで書くとMDR-Z7の出番がないような感じになってしまいますが、MDR-Z7も良い所はあります。

MDR-Z7MDR-Z1Rより小ぶりで重量も軽めですので、MDR-Z1Rよりは取り回しは良いです。また、雑音の多い外で聴く場合は微小音はMDR-Z1Rでも聴き取り難くなりますので、音場の広さはMDR-Z1Rが優れていますが、相対的にMDR-Z1Rの優位性は低くなります。MDR-Z7は再生周波数帯域はMDR-Z1Rより狭めですが、それでも中低域を元気よく鳴らし、音楽を心地よく聴かせるチューニングがされていますので、これはこれで上手くまとまっています。外で聴くならMDR-Z7で十分かと思います。

MDR-Z1Rの欠点は?

まるで非の打ち所がないMDR-Z1Rですが、欠点を挙げるとすると、ヘッドフォン自体に色づけがないので、低域は十分出ているのですが、低域を強調するようなヘッドフォンを普段使っていた場合、一聴すると低域や迫力が物足りなく感じたりする可能性があります。MDR-Z1Rは家庭用リスニングヘッドフォンなのですが、業務用のモニターヘッドフォンとしても十分使えるくらいのクオリティで作られているそうです。特徴としては音楽ジャンルを選ばないフラットでナチュラルな再生なのですが、ロックや打ち込み系の音楽よりは生演奏を収録したジャズやクラシックの方がより向いていそうです。他の一般的な家庭用リスニングヘッドフォンのように中域や低域を強調するような色づけがないので、好みに合わないとつまらないと感じる方もおられるかも知れません。このあたりは好みですので、購入される前に十分試聴されることをお勧めします。

NW-WM1ZやTA-ZH1ESとの接続で真価を発揮

このヘッドフォンはバランス接続でNW-WM1ZTA-ZH1ESと接続することで真価を発揮できるヘッドフォンかも知れません。試しにDP-X1にDACヘッドフォンアンプXD-05を繋いだ状態で再生してみましたが、非バランス接続ということもあるかもしれませんが、NW-WM1Zと繋いだ時のような音の広がりや微小音の再生、空気感、音のリアルさに劣る感じがしました。このヘッドフォンは駆動力がそこそこある再生機器でバランス接続で再生しないと、少々もったいないかも知れないです。

総評

密閉型ヘッドフォンでここまでの開放感を実現したヘッドフォンは他にないと思われます。低域から高域までフラットに伸びるナチュラルな再生音は好みに合えば大変素晴らしく、音場も広いこのような密閉型ヘッドフォンは他にないと思います。欠点はやや大ぶりで可搬性に劣ることと価格くらいでしょうか。収納ケースにはこだわったらしいですが、個人的にはあの収納ケースは要らないから価格を抑えてもらった方が良かったなと思います。

#MDRZ1R #ヘッドフォン #オーディオ #AUDIO #SONY


橋本 尚久
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